Ⅲ 女性活躍推進法 「一般事業主行動計画」の為に必要な手順は?(その3)

~目標を設定し、その取り組み内容と期間を定めた「一般事業主行動計画」を策定します~
1 「一般事業主行動計画を策定する」
ステップ1 で状況把握と課題分析を行ったら、その結果を元に、目標設定と取組内容の決定を行います。
その際、労働者数301人以上の企業は、①と②の区分ごとに1項目以上(計2項目以上)を選択し、それぞれ関連する数値目標と取組内容が必要です。
① 女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供 | ②職業生活と家庭生活の両立に 資する雇用環境の整備 |
・採用した労働者に占める女性労働者の割合(区) ・男女別の採用における競争倍率(区) ・労働者に占める女性労働者の割合(区)(派) ・男女別の配置の状況(区) ・男女別の将来の育成を目的とした教育訓練の受講の状況(区) ・管理職及び男女の労働者の配置・育成・評価・昇進・性別役割分担意識その他の職場風土等に関する意識(区) ・管理職に占める女性労働者の割合 ・各職階の労働者に占める女性労働者の割合及び役員に占める女性の割合 ・男女別の1つ上位の職階へ昇進した労働者の割合 ・男女の人事評価の結果における差異(区) ・セクシュアルハラスメント等に関する各種相談窓口への相談状況(区)(派) ・男女別の職種又は雇用形態の転換の実績(区)(派:雇入れの実績) ・男女別の再雇用又は中途採用の実績(区) ・男女別の職種又は若しくは雇用形態の転換者、再雇用者又は中途採用者を管理職へ登用した実績 ・非正社員の男女別のキャリアアップに向けた研修の受講の状況(区) ・男女の賃金の差異(区) | ・男女の平均勤続勤務年数の差異(区) ・10事業年度前及びその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合(区) ・男女別の育児休業取得率及び平均取得期間(区) ・男女別の職業生活と家庭生活との両立を支援するための制度(育児休業を除く) の利用実績(区) ・男女別のフレックスタイム制、在宅勤務、テレワーク等の柔軟な働き方に資する制度の利用実績 ・労働者の各月ごとの平均残業時間数等の労働時間(健康管理時間)の状況 ・労働者の各月ごとの平均残業時間数等の労働時間(健康管理時間)の状況(区)(派) ・有給休暇取得率(区) |
(注)①太字は基礎項目(必ず把握すべき項目)
②(区)の表示のある項目については、雇用管理区分ごとに把握を行うことが必要
③(派)の表示のある項目については、労働者派遣の役務の提供を受ける場合には、
状況把握の際は、派遣労働者を含めて把握を行うことが必要
2 目標設定
・状況把握、課題分析の結果、実情に応じて課題であると判断したものに対応し、最も大きな課題と
考えられるものから優先的に数値目標を設定しましょう
・目標は、
301人以上企業は、2つの区分 (前頁の①②)ごとにそれぞれ1つ以上(計2項目以上)
101人~300人企業は、1つ以上
数値で定める必要があります ※数値目標だと客観的に達成状況を把握できるため
・できる限り積極的に複数の課題に対応する数値目標を設定することが効果的です
・数値目標は、実数、割合、倍数など数値を用いるものであればいずれでも良いですが、
計画期間内に達成を目指すものとして、実情に見合った水準にしましょう
(例:〇人以上、〇割以上、〇倍以上とする)
<数値目標の例>
- 技術職の女性を現員の2人から10人以上に増加させる
- これまで女性の配置の無かった現場事務所3か所以上に、新たに技術系の女性社員をそれぞれ1人以上配置する
- 時間外労働時間を現在より1割削減する
- 女性管理職を1人以上登用する
3 取組内容の決定
・取組内容を決定する際は、最も大きな課題として数値目標の設定を行ったものから優先的に、
その数値目標の達成に向けてどのような取組を行うべきか検討しましょう。
・取組内容と併せて実施時期を検討しましょう
〈留意点〉
・行動計画の内容は、男女雇用機会均等法に違反しない内容とすることが必要です!
・男女雇用機会均等法の第8条「女性労働者についての措置に関する特例」が認められるケース
(例:ある職種で女性の占める割合が4割未満の場合は「女性のみ募集」が認められる)を除いては、
女性のみの取組は男女雇用機会均等法違反となりますので注意が必要です
(例:女性社員が4割を超えるのに、女性のみ募集をするなど)。
・女性が4割を上回る雇用管理区分においては、男女とも対象とした取組を実施することにより、
数値目標の達成を目指してください
(例:女性のみ管理職育成研修→男女とも対象)
4 一般事業主行動計画とは?
(行動計画の例)
「計画期間」「数値目標」「取組内容」「取組の実施時期」の4項目を記載します。

<計画期間、当社の課題、目標と取組内容・実施時期>
「計画期間」
2016年(平成28年)から2025年(令和7年)までの10年間で、
実情に応じて「おおむね2年から5年間」に区切り設定します。
※期間を区切るのは、期間終了ごとに進捗を検証し、次の目標設定をしてもらうため。
「1 計画期間」に記載します
「2 当社の課題」に、状況把握・課題分析し設定した課題を記載します
「3 目標と取組内容・実施時期」に、
・「目標1」、「目標2」を記載し、目標に(b)数値目標を記載します
・〈取組内容〉に(c)取組内容と(d)取組の実施時期 を記載します
5 行動計画の策定例紹介
【その1】
モデル行動計画 A:301人以上(女性の採用が進んでおらず、かつ結婚や出産等で退職する女性が多く、女性の人数が少ない会社)
<株式会社 >A
女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画
男女ともに全社員が活躍できる雇用環境の整備を行うため、次のように行動計画を策定する。
- 計画期間 2020 年 4 月 1 日~2025 年 3 月 31 日
- 当社の課題
- 女性からの応募が少ない。
- 女性に適した業務がないという先入観があり、女性の採用が進んでいない。
- 残業が多く、仕事と家庭の両立が難しいと考えられることから、結婚や出産等のライフイベントを機に退職する社員が多い。
3. 目標と取組内容・実施時期
目標 1
全社員に占める女性の割合を 30%以上とする。
<実施時期・取組内容>
2020 年 10 月~ 女子学生からの応募を増やすため、就職説明会等で積極的な広報を行う。
2022 年 4 月~ 仕事と育児の両立を支援するため、定期的に管理職に対して当社の育児関連制度の周知と意識啓発を実施する。
2023 年 4 月~ 社内の配置転換のルールを明確化する。
2024 年 4 月~ 女性が少ない○○部への女性の積極的な配置をする。
目標 2
全社員の一月当たりの平均残業時間を 10 時間以内とする。
<実施時期・取組内容>
2020 年 4 月~ 長時間労働削減の方針について、経営トップからメッセージを発信する。
(毎年1回実施)
2021 年 4 月~ 部門ごとに業務内容の見直しを実施し、効率化に向けての計画を策定する。
2022 年 4 月~ 毎週水曜日と金曜日は、管理職も含めた完全定時退社とする。
2023 年 4 月~ 部門ごとの業務効率化計画の進捗を経営会議での報告事項とする。
2024 年 4 月~ 社内の業務効率化への優れた取組に対して表彰を行い、好事例として全社に展開する。
【その2】
モデル行動計画 B:300人以下(女性の採用を増やしたい会社)
<株式会社 B>
女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画
すべての社員がその能力を十分に発揮し、働きやすい職場環境を整えるため、次のように行動計画を策定する。
1. 計画期間 2020 年 4 月 1 日~2022 年 3 月 31 日
2. 目標と取組内容・実施時期
目標
採用者に占める女性の割合を 40%以上とする。
<実施時期・取組内容>
2020 年 4 月~ 女子学生の応募を増やすため、ホームページの採用ページの内容を見直し、改定する。
2020 年 10 月~ 女子学生が多い学校で会社説明会を実施する。
2021 年 3 月~ 女性の採用拡大に向けた、インターンシップを実施する。
2021 年 4 月~ 出産や育児を理由に退職した社員に対する再雇用制度を導入する。